アル・カフ
قَالَ أَلَمْ أَقُلْ لَكَ إِنَّكَ لَنْ تَسْتَطِيعَ مَعِيَ صَبْرًا75
かれは答えて言った。「あなたは,わたしと一緒には耐えられないと,告げなかったか。」
قَالَ إِنْ سَأَلْتُكَ عَنْ شَيْءٍ بَعْدَهَا فَلَا تُصَاحِبْنِي ۖ قَدْ بَلَغْتَ مِنْ لَدُنِّي عُذْرًا76
かれ(ムーサー)は言った。「今後わたしが,何かに就いてあなたに尋ねたならば,わたしを道連れにしないで下さい。(既に)あなたはわたしからの御許しの願いを,(凡て)御受け入れ下さいました。」
فَانْطَلَقَا حَتَّىٰ إِذَا أَتَيَا أَهْلَ قَرْيَةٍ اسْتَطْعَمَا أَهْلَهَا فَأَبَوْا أَنْ يُضَيِّفُوهُمَا فَوَجَدَا فِيهَا جِدَارًا يُرِيدُ أَنْ يَنْقَضَّ فَأَقَامَهُ ۖ قَالَ لَوْ شِئْتَ لَاتَّخَذْتَ عَلَيْهِ أَجْرًا77
それから2人は旅を続けて,或る町の住民の所まで来た。そこの村人に食物を求めたが,かれらは2人を歓待することを拒否した。その時2人は,正に倒れんばかりの壁を見付けて,かれはそれを直してやった。かれ(ムーサー)は言った。「もし望んだならば,それに対してきっと報酬がとれたでしょう」
قَالَ هَـٰذَا فِرَاقُ بَيْنِي وَبَيْنِكَ ۚ سَأُنَبِّئُكَ بِتَأْوِيلِ مَا لَمْ تَسْتَطِعْ عَلَيْهِ صَبْرًا78
かれは言った。「これでわたしとあなたは御別れである。さて,あなたがよく耐えられなかったことに就いて説明してみよう。」
أَمَّا السَّفِينَةُ فَكَانَتْ لِمَسَاكِينَ يَعْمَلُونَ فِي الْبَحْرِ فَأَرَدْتُ أَنْ أَعِيبَهَا وَكَانَ وَرَاءَهُمْ مَلِكٌ يَأْخُذُ كُلَّ سَفِينَةٍ غَصْبًا79
「舟に就いていうと,それは海で働く或る貧乏人たちの所有であった。わたしがそれを役立たないようにしようとしたのは,かれらの背後に一人の王がいて,凡ての舟を強奪するためであった。
وَأَمَّا الْغُلَامُ فَكَانَ أَبَوَاهُ مُؤْمِنَيْنِ فَخَشِينَا أَنْ يُرْهِقَهُمَا طُغْيَانًا وَكُفْرًا80
男の子に就いていえば,かれの両親は信者であったが,わたしたちは,かれの反抗と不信心が,両親に累を及ぼすことを恐れたのである。
فَأَرَدْنَا أَنْ يُبْدِلَهُمَا رَبُّهُمَا خَيْرًا مِنْهُ زَكَاةً وَأَقْرَبَ رُحْمًا81
それでわたしたちは,主がかれよりも優れた性質の,純潔でもっと孝行な(息子)を,かれら両人のために授けるよう願ったのである。
وَأَمَّا الْجِدَارُ فَكَانَ لِغُلَامَيْنِ يَتِيمَيْنِ فِي الْمَدِينَةِ وَكَانَ تَحْتَهُ كَنْزٌ لَهُمَا وَكَانَ أَبُوهُمَا صَالِحًا فَأَرَادَ رَبُّكَ أَنْ يَبْلُغَا أَشُدَّهُمَا وَيَسْتَخْرِجَا كَنْزَهُمَا رَحْمَةً مِنْ رَبِّكَ ۚ وَمَا فَعَلْتُهُ عَنْ أَمْرِي ۚ ذَٰلِكَ تَأْوِيلُ مَا لَمْ تَسْطِعْ عَلَيْهِ صَبْرًا82
あの壁は町の2人の幼ない孤児のもので,その下には,かれらに帰属する財宝が埋めてあり,父親は正しい人物であった。それで主は,かれらが成年に達してから,その財宝をかれら両人のために掘り出すことを望まれた。(これは)主からの御恵みである。わたしが勝手に行ったことではなかったのだ。これがあなたの耐えられなかったことの説明である。」
وَيَسْأَلُونَكَ عَنْ ذِي الْقَرْنَيْنِ ۖ قُلْ سَأَتْلُو عَلَيْكُمْ مِنْهُ ذِكْرًا83
かれらは,ズ・ル・カルナインに就いてあなたに問うであろう。言つてやるがいい。「わたしはかれに就いて,あなたがたにある物語をしよう。」
إِنَّا مَكَّنَّا لَهُ فِي الْأَرْضِ وَآتَيْنَاهُ مِنْ كُلِّ شَيْءٍ سَبَبًا84
本当にわれは,地上にかれ(の権勢)を打ち建て,また凡ての事を,成就する基になるものを授けた。
فَأَتْبَعَ سَبَبًا85
それでかれは,一つの道を辿った。
حَتَّىٰ إِذَا بَلَغَ مَغْرِبَ الشَّمْسِ وَجَدَهَا تَغْرُبُ فِي عَيْنٍ حَمِئَةٍ وَوَجَدَ عِنْدَهَا قَوْمًا ۗ قُلْنَا يَا ذَا الْقَرْنَيْنِ إِمَّا أَنْ تُعَذِّبَ وَإِمَّا أَنْ تَتَّخِذَ فِيهِمْ حُسْنًا86
かれが太陽の沈む(国)に来ると,それが泥の泉に没するのを認め,その近くに一種族を見付けた。われは(霊感を通して)言った。「ズ・ル・カルナインよ,かれらを懲しめてもよい。また親切にかれらを待遇してもよい。」
قَالَ أَمَّا مَنْ ظَلَمَ فَسَوْفَ نُعَذِّبُهُ ثُمَّ يُرَدُّ إِلَىٰ رَبِّهِ فَيُعَذِّبُهُ عَذَابًا نُكْرًا87
かれは言った。「誰でも不義を行う者には,わたしたちは刑罰を加える。それからかれを主に帰らせ,かれは,厳刑をもってかれ(犯罪者)を懲罰されるであろう。
وَأَمَّا مَنْ آمَنَ وَعَمِلَ صَالِحًا فَلَهُ جَزَاءً الْحُسْنَىٰ ۖ وَسَنَقُولُ لَهُ مِنْ أَمْرِنَا يُسْرًا88
また誰でも信仰して,善行に動しむ者には,良い報奨があろう。またわたしたちは,安易なことを命じるであろう。」
ثُمَّ أَتْبَعَ سَبَبًا89
それからかれは,(外の)一つの道を辿った。
حَتَّىٰ إِذَا بَلَغَ مَطْلِعَ الشَّمْسِ وَجَدَهَا تَطْلُعُ عَلَىٰ قَوْمٍ لَمْ نَجْعَلْ لَهُمْ مِنْ دُونِهَا سِتْرًا90
かれが太陽の登る(国)に来た時,それが一種族の上に登り,われがそれ(太陽)に対し,かれらのために覆いを設けないのを認めた。
كَذَٰلِكَ وَقَدْ أَحَطْنَا بِمَا لَدَيْهِ خُبْرًا91
そのようにし(てそっと置い)た。われはかれが持つものを知り尽くしている。
ثُمَّ أَتْبَعَ سَبَبًا92
それからかれは(更に外の)一つの道を辿った。
حَتَّىٰ إِذَا بَلَغَ بَيْنَ السَّدَّيْنِ وَجَدَ مِنْ دُونِهِمَا قَوْمًا لَا يَكَادُونَ يَفْقَهُونَ قَوْلًا93
かれが2つの山の間に来た時,かれはその麓に凡んど言葉を解しない一種族を見付けた。
قَالُوا يَا ذَا الْقَرْنَيْنِ إِنَّ يَأْجُوجَ وَمَأْجُوجَ مُفْسِدُونَ فِي الْأَرْضِ فَهَلْ نَجْعَلُ لَكَ خَرْجًا عَلَىٰ أَنْ تَجْعَلَ بَيْنَنَا وَبَيْنَهُمْ سَدًّا94
かれらは言った。「ズ・ル・カルナインよ,ヤァジュ―ジュとマァジュージュが,この国で悪を働いています。それでわたしたちは税を納めますから,防壁を築いて下さいませんか。」
قَالَ مَا مَكَّنِّي فِيهِ رَبِّي خَيْرٌ فَأَعِينُونِي بِقُوَّةٍ أَجْعَلْ بَيْنَكُمْ وَبَيْنَهُمْ رَدْمًا95
かれは(答えて)言った。「主がわたしに授けられた(力)は,(この種族よりも)優れている。それであなたがたが,力技で助けてくれるならば,わたしはあなたがたとかれらとの間に防壁を築こう。
آتُونِي زُبَرَ الْحَدِيدِ ۖ حَتَّىٰ إِذَا سَاوَىٰ بَيْنَ الصَّدَفَيْنِ قَالَ انْفُخُوا ۖ حَتَّىٰ إِذَا جَعَلَهُ نَارًا قَالَ آتُونِي أُفْرِغْ عَلَيْهِ قِطْرًا96
鉄の塊りをわたしの所に持って来なさい。」やがて2つの山の間の空地が満たされた時,かれは言った。「吹け。それが火になるまで。」(また)かれは言った。「溶けた銅を持って来てその上に注げ。」
فَمَا اسْطَاعُوا أَنْ يَظْهَرُوهُ وَمَا اسْتَطَاعُوا لَهُ نَقْبًا97
それでかれら(外敵)は,それに登ることも出来ず,またそれに穴を掘ることも出来なかった。
قَالَ هَـٰذَا رَحْمَةٌ مِنْ رَبِّي ۖ فَإِذَا جَاءَ وَعْدُ رَبِّي جَعَلَهُ دَكَّاءَ ۖ وَكَانَ وَعْدُ رَبِّي حَقًّا98
かれは言った。「これは,わたしの主からの御慈悲である。しかし主の約束がやって来る時,かれはそれを粉々にされよう。わたしの主の御約束は真実である。」
وَتَرَكْنَا بَعْضَهُمْ يَوْمَئِذٍ يَمُوجُ فِي بَعْضٍ ۖ وَنُفِخَ فِي الصُّورِ فَجَمَعْنَاهُمْ جَمْعًا99
その日われは,人を御互いに押し寄せる波のようにまかせよう。その時ラッパが吹かれ,それでわれは凡ての者を一斉に集める。
وَعَرَضْنَا جَهَنَّمَ يَوْمَئِذٍ لِلْكَافِرِينَ عَرْضًا100
その日われは,不信者たちに地獄を現わし,日の辺に見せる。
الَّذِينَ كَانَتْ أَعْيُنُهُمْ فِي غِطَاءٍ عَنْ ذِكْرِي وَكَانُوا لَا يَسْتَطِيعُونَ سَمْعًا101
日に覆がされていた者は,われを念じることから(遠ざかり),聞くことも出来ないでいた。
أَفَحَسِبَ الَّذِينَ كَفَرُوا أَنْ يَتَّخِذُوا عِبَادِي مِنْ دُونِي أَوْلِيَاءَ ۚ إِنَّا أَعْتَدْنَا جَهَنَّمَ لِلْكَافِرِينَ نُزُلًا102
信じない者たちは,われを差し置いてわれのしもベを保護者とすることが出来ると考えるのか。本当にわれは,不信者を歓待するために,地獄を準備している。
قُلْ هَلْ نُنَبِّئُكُمْ بِالْأَخْسَرِينَ أَعْمَالًا103
言ってやるがいい。「誰が行いにおいて最大の失敗者であるか,告げようか。
الَّذِينَ ضَلَّ سَعْيُهُمْ فِي الْحَيَاةِ الدُّنْيَا وَهُمْ يَحْسَبُونَ أَنَّهُمْ يُحْسِنُونَ صُنْعًا104
つまり自分では善いことをしていると,かれらは考えているが,現世の生活においての努力が,凡て間違った道に行ってしまうような者たちである。
أُولَـٰئِكَ الَّذِينَ كَفَرُوا بِآيَاتِ رَبِّهِمْ وَلِقَائِهِ فَحَبِطَتْ أَعْمَالُهُمْ فَلَا نُقِيمُ لَهُمْ يَوْمَ الْقِيَامَةِ وَزْنًا105
これらの者は,主の印,また主との会見を信じない者たちで,かれらの行いは無駄になり,われは審判の日にかれらにどんな目方も与えないであろう。
ذَٰلِكَ جَزَاؤُهُمْ جَهَنَّمُ بِمَا كَفَرُوا وَاتَّخَذُوا آيَاتِي وَرُسُلِي هُزُوًا106
それがかれらにとって当然の報いの地獄である。かれらは信仰を拒否し,われの印や使徒たちを嘲笑したからである。
إِنَّ الَّذِينَ آمَنُوا وَعَمِلُوا الصَّالِحَاتِ كَانَتْ لَهُمْ جَنَّاتُ الْفِرْدَوْسِ نُزُلًا107
本当に信仰して善行に励む者に対する歓待は,天国の楽園である。
خَالِدِينَ فِيهَا لَا يَبْغُونَ عَنْهَا حِوَلًا108
かれらはそこに永遠に住もう。かれらはそこから移ることを望まない。」
قُلْ لَوْ كَانَ الْبَحْرُ مِدَادًا لِكَلِمَاتِ رَبِّي لَنَفِدَ الْبَحْرُ قَبْلَ أَنْ تَنْفَدَ كَلِمَاتُ رَبِّي وَلَوْ جِئْنَا بِمِثْلِهِ مَدَدًا109
言ってやるがいい。「仮令海が,主の御言葉を記すための墨であっても,主の御言葉が尽きない中に,海は必ず使い尽くされよう。たとえわたしたちが(他の)それと同じ(海)を補充のために持っても。
قُلْ إِنَّمَا أَنَا بَشَرٌ مِثْلُكُمْ يُوحَىٰ إِلَيَّ أَنَّمَا إِلَـٰهُكُمْ إِلَـٰهٌ وَاحِدٌ ۖ فَمَنْ كَانَ يَرْجُو لِقَاءَ رَبِّهِ فَلْيَعْمَلْ عَمَلًا صَالِحًا وَلَا يُشْرِكْ بِعِبَادَةِ رَبِّهِ أَحَدًا110
言ってやるがいい。「わたしはあなたがたと同じ,只の人間に過ぎない。あなたがたの神は,唯一の神(アッラー)であることが,わたしに啓示されたのである。凡そ誰でも,主との会見を請い願う者は,正しい行いをしなさい。かれの主を崇る場合に何一つ(同位に)配置して崇拝してはならない。」
マリヤム
بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَٰنِ الرَّحِيمِ
كهيعص1
カーフ・ハー・ヤー・アイン・サード。
ذِكْرُ رَحْمَتِ رَبِّكَ عَبْدَهُ زَكَرِيَّا2
(これは)あなたの主が,しもベのザカリーヤーに御慈悲を与えたことの記述である。
إِذْ نَادَىٰ رَبَّهُ نِدَاءً خَفِيًّا3
かれが密かに請願して,主に祈った時を思え。
قَالَ رَبِّ إِنِّي وَهَنَ الْعَظْمُ مِنِّي وَاشْتَعَلَ الرَّأْسُ شَيْبًا وَلَمْ أَكُنْ بِدُعَائِكَ رَبِّ شَقِيًّا4
かれは言った。「主よ,わたしの骨は本当に弱まり,また頭の髪は灰色に輝きます。だが主よ,わたしはあなたに御祈りして,御恵みを与えられないことはありません。
وَإِنِّي خِفْتُ الْمَوَالِيَ مِنْ وَرَائِي وَكَانَتِ امْرَأَتِي عَاقِرًا فَهَبْ لِي مِنْ لَدُنْكَ وَلِيًّا5
只々わたしの後の,近親(と同胞のこと)を恐れます。わたしの妻は不妊です。それであなたの御許から,相続者をわたしに御授け下さい。
يَرِثُنِي وَيَرِثُ مِنْ آلِ يَعْقُوبَ ۖ وَاجْعَلْهُ رَبِّ رَضِيًّا6
わたしを継がせ,またヤアコーブの家を継がせて下さい。主よ,かれを御意に適う者にして下さい。」
يَا زَكَرِيَّا إِنَّا نُبَشِّرُكَ بِغُلَامٍ اسْمُهُ يَحْيَىٰ لَمْ نَجْعَلْ لَهُ مِنْ قَبْلُ سَمِيًّا7
(主は仰せられた。)「ザカリーヤーよ,本当にわれはあなたに,ヤヒヤーという名の息子の昔報を伝える。われは未だ且つて誰にもその名は授けなかった。」
قَالَ رَبِّ أَنَّىٰ يَكُونُ لِي غُلَامٌ وَكَانَتِ امْرَأَتِي عَاقِرًا وَقَدْ بَلَغْتُ مِنَ الْكِبَرِ عِتِيًّا8
かれは申しあげた。「主よ,わたしにどうして息子がありましょう。わたしの妻は不妊です。その上わたしは極めて高齢になりました。」
قَالَ كَذَٰلِكَ قَالَ رَبُّكَ هُوَ عَلَيَّ هَيِّنٌ وَقَدْ خَلَقْتُكَ مِنْ قَبْلُ وَلَمْ تَكُ شَيْئًا9
かれは言った。「そうであろう。(だが)あなたの主は仰せられる。『それはわれにとっては容易なことである。あなたが何もない時に,われが以前あなたを創ったように。』」
قَالَ رَبِّ اجْعَلْ لِي آيَةً ۚ قَالَ آيَتُكَ أَلَّا تُكَلِّمَ النَّاسَ ثَلَاثَ لَيَالٍ سَوِيًّا10
かれは申し上げた。「主よ印を御示し下さい。」かれは言った。「あなたの体は,健全でありながら,印として3夜の間人に話せなくなるであろう。」
فَخَرَجَ عَلَىٰ قَوْمِهِ مِنَ الْمِحْرَابِ فَأَوْحَىٰ إِلَيْهِمْ أَنْ سَبِّحُوا بُكْرَةً وَعَشِيًّا11
そこでかれは聖所を出て人びとの所に来て,「朝な夕な(主を)讃えなさい。」と手まねで伝えた。
يَا يَحْيَىٰ خُذِ الْكِتَابَ بِقُوَّةٍ ۖ وَآتَيْنَاهُ الْحُكْمَ صَبِيًّا12
(そしてかれの息子に。)「ヤヒヤーよ,啓典をしっかりと守れ。」(と命令が下った)。そしてわれは,幼少(の時)かれに英知を授け,
وَحَنَانًا مِنْ لَدُنَّا وَزَكَاةً ۖ وَكَانَ تَقِيًّا13
またわが許から慈愛と清純な心を授けた。かれは主を畏れ,
وَبَرًّا بِوَالِدَيْهِ وَلَمْ يَكُنْ جَبَّارًا عَصِيًّا14
父母に孝行で高慢でなく,背くこともなかった。
وَسَلَامٌ عَلَيْهِ يَوْمَ وُلِدَ وَيَوْمَ يَمُوتُ وَيَوْمَ يُبْعَثُ حَيًّا15
かれの生誕の日,死去の日,復活の日に,かれの上に平安あれ。
وَاذْكُرْ فِي الْكِتَابِ مَرْيَمَ إِذِ انْتَبَذَتْ مِنْ أَهْلِهَا مَكَانًا شَرْقِيًّا16
またこの啓典の中で,マルヤム(の物語)を述べよ。かの女が家族から離れて東の場に引き籠った時,
فَاتَّخَذَتْ مِنْ دُونِهِمْ حِجَابًا فَأَرْسَلْنَا إِلَيْهَا رُوحَنَا فَتَمَثَّلَ لَهَا بَشَرًا سَوِيًّا17
かの女はかれらから(身をさえぎる)幕を垂れた。その時われはわが聖霊(ジブリール)を遣わした。かれは1人の立派な人間の姿でかの女の前に現われた。
قَالَتْ إِنِّي أَعُوذُ بِالرَّحْمَـٰنِ مِنْكَ إِنْ كُنْتَ تَقِيًّا18
かの女は言った。「あなた(ジブリール)に対して慈悲深き御方の御加護を祈ります。もしあなたが,主を畏れておられるならば(わたしに近寄らないで下さい)。」
قَالَ إِنَّمَا أَنَا رَسُولُ رَبِّكِ لِأَهَبَ لَكِ غُلَامًا زَكِيًّا19
かれは言った。「わたしは,あなたの主から遣わされた使徒に過ぎない。清純な息子をあなたに授ける(知らせの)ために。」
قَالَتْ أَنَّىٰ يَكُونُ لِي غُلَامٌ وَلَمْ يَمْسَسْنِي بَشَرٌ وَلَمْ أَكُ بَغِيًّا20
かの女は言った。「未だ且つて,誰もわたしに触れません。またわたしは不貞でもありません。どうしてわたしに息子がありましょう。」
قَالَ كَذَٰلِكِ قَالَ رَبُّكِ هُوَ عَلَيَّ هَيِّنٌ ۖ وَلِنَجْعَلَهُ آيَةً لِلنَّاسِ وَرَحْمَةً مِنَّا ۚ وَكَانَ أَمْرًا مَقْضِيًّا21
かれ(天使)は言った。「そうであろう。(だが)あなたの主は仰せられる。『それはわれにとっては容易なことである。それでかれ(息子)を入びとへの印となし,またわれからの慈悲とするためである。(これは既に)アッラーの御命令があったことである。』」
فَحَمَلَتْهُ فَانْتَبَذَتْ بِهِ مَكَانًا قَصِيًّا22
こうして,かの女はかれ(息子)を妊娠したので,遠い所に引き籠った。
فَأَجَاءَهَا الْمَخَاضُ إِلَىٰ جِذْعِ النَّخْلَةِ قَالَتْ يَا لَيْتَنِي مِتُّ قَبْلَ هَـٰذَا وَكُنْتُ نَسْيًا مَنْسِيًّا23
だが分娩の苦痛のために,ナツメヤシの幹に赴き,かの女は言った。「ああ,こんなことになる前に,わたしは亡きものになり,忘却の中に消えたかった。」
فَنَادَاهَا مِنْ تَحْتِهَا أَلَّا تَحْزَنِي قَدْ جَعَلَ رَبُّكِ تَحْتَكِ سَرِيًّا24
その時(声があって)かの女を下の方から呼んだ。「悲しんではならない。主はあなたの足もとに小川を創られた。
وَهُزِّي إِلَيْكِ بِجِذْعِ النَّخْلَةِ تُسَاقِطْ عَلَيْكِ رُطَبًا جَنِيًّا25
またナツメヤシの幹を,あなたの方に揺り動かせ。新鮮な熟したナツメヤシの実が落ちてこよう。
فَكُلِي وَاشْرَبِي وَقَرِّي عَيْنًا ۖ فَإِمَّا تَرَيِنَّ مِنَ الْبَشَرِ أَحَدًا فَقُولِي إِنِّي نَذَرْتُ لِلرَّحْمَـٰنِ صَوْمًا فَلَنْ أُكَلِّمَ الْيَوْمَ إِنْسِيًّا26
食べ且つ飲んで,あなたの目を冷しなさい。そしてもし誰かを見たならば,『わたしは慈悲深き主に,斎戒の約束をしました。それで今日は,誰とも御話いたしません。』と言ってやろがいい。」
فَأَتَتْ بِهِ قَوْمَهَا تَحْمِلُهُ ۖ قَالُوا يَا مَرْيَمُ لَقَدْ جِئْتِ شَيْئًا فَرِيًّا27
それからかの女は,かれ(息子)を抱いて自分の人びとの許に帰って来た。かれらは言った。「マルヤムよ,あなたは,何と大変なことをしてくれたのか。
يَا أُخْتَ هَارُونَ مَا كَانَ أَبُوكِ امْرَأَ سَوْءٍ وَمَا كَانَتْ أُمُّكِ بَغِيًّا28
ハールーンの姉妹よ,あなたの父は悪い人ではなかった。母親も不貞の女ではなかったのだが。」
فَأَشَارَتْ إِلَيْهِ ۖ قَالُوا كَيْفَ نُكَلِّمُ مَنْ كَانَ فِي الْمَهْدِ صَبِيًّا29
そこでかの女は,かれ(息子)を指さした。かれらは言った。「どうしてわたしたちは,揺能の中の赤ん坊に話すことが出来ようか。」
قَالَ إِنِّي عَبْدُ اللَّهِ آتَانِيَ الْكِتَابَ وَجَعَلَنِي نَبِيًّا30
(その時)かれ(息子)は言った。「わたしは,本当にアッラーのしもベです。かれは啓典をわたしに与え,またわたしを預言者になされました。
وَجَعَلَنِي مُبَارَكًا أَيْنَ مَا كُنْتُ وَأَوْصَانِي بِالصَّلَاةِ وَالزَّكَاةِ مَا دُمْتُ حَيًّا31
またかれは,わたしが何処にいようとも祝福を与えます。また生命のある限り礼拝を捧げ,喜捨をするよう,わたしに御命じになりました。
وَبَرًّا بِوَالِدَتِي وَلَمْ يَجْعَلْنِي جَبَّارًا شَقِيًّا32
またわたしの母に孝養を尽くさせ,高慢な恵まれない者になされませんでした。
وَالسَّلَامُ عَلَيَّ يَوْمَ وُلِدْتُ وَيَوْمَ أَمُوتُ وَيَوْمَ أُبْعَثُ حَيًّا33
またわたしの出生の日,死去の日,復活の日に,わたしの上に平安がありますように。」
ذَٰلِكَ عِيسَى ابْنُ مَرْيَمَ ۚ قَوْلَ الْحَقِّ الَّذِي فِيهِ يَمْتَرُونَ34
そのこと(イーサーがマルヤムの子であること)に就いて,かれら(ユダヤ教徒,キリスト教徒)は疑っているが本当に真実そのものである。
مَا كَانَ لِلَّهِ أَنْ يَتَّخِذَ مِنْ وَلَدٍ ۖ سُبْحَانَهُ ۚ إِذَا قَضَىٰ أَمْرًا فَإِنَّمَا يَقُولُ لَهُ كُنْ فَيَكُونُ35
アッラーに子供が出来るなどということはありえない。かれに讃えあれ。かれが一事を決定され,唯「有れ。」と仰せになれば,即ち有るのである。
وَإِنَّ اللَّهَ رَبِّي وَرَبُّكُمْ فَاعْبُدُوهُ ۚ هَـٰذَا صِرَاطٌ مُسْتَقِيمٌ36
本当にアッラーは,わたしの主であり,またあなたがたの主であられる。だからかれに仕えなさい。これこそ正しい道である。
فَاخْتَلَفَ الْأَحْزَابُ مِنْ بَيْنِهِمْ ۖ فَوَيْلٌ لِلَّذِينَ كَفَرُوا مِنْ مَشْهَدِ يَوْمٍ عَظِيمٍ37
それなのにかれらの間で,諸宗派が異なる。信じない者こそ災いである。偉大なる日の審判のためこ。
أَسْمِعْ بِهِمْ وَأَبْصِرْ يَوْمَ يَأْتُونَنَا ۖ لَـٰكِنِ الظَّالِمُونَ الْيَوْمَ فِي ضَلَالٍ مُبِينٍ38
かれらがわが前に罷り出る日,何んとはっきりと聞こえまた見えるであろうか。だが不義者たちは,今日(現世で)は明らかに迷誤の中にいる。
وَأَنْذِرْهُمْ يَوْمَ الْحَسْرَةِ إِذْ قُضِيَ الْأَمْرُ وَهُمْ فِي غَفْلَةٍ وَهُمْ لَا يُؤْمِنُونَ39
あなたは悔恨の日(復活の日)に就いて,かれらに警告しなさい。その時,事は決定されるのである。かれらが油断し,また不信心である間に。
إِنَّا نَحْنُ نَرِثُ الْأَرْضَ وَمَنْ عَلَيْهَا وَإِلَيْنَا يُرْجَعُونَ40
われは,大地とその上にある凡てのものを相続する。またわれに,かれらは帰るのである。
وَاذْكُرْ فِي الْكِتَابِ إِبْرَاهِيمَ ۚ إِنَّهُ كَانَ صِدِّيقًا نَبِيًّا41
またこの啓典の中で,イブラーヒーム(の物語)を述べよ。本当にかれは正直者であり預言者であった。
إِذْ قَالَ لِأَبِيهِ يَا أَبَتِ لِمَ تَعْبُدُ مَا لَا يَسْمَعُ وَلَا يُبْصِرُ وَلَا يُغْنِي عَنْكَ شَيْئًا42
かれが父にこう言った時を思え。「父よ,あなたは何故聞きも,見もしないで,また僅かの益をも与えないもの(木石の偶像)を崇拝なさるのか。
يَا أَبَتِ إِنِّي قَدْ جَاءَنِي مِنَ الْعِلْمِ مَا لَمْ يَأْتِكَ فَاتَّبِعْنِي أَهْدِكَ صِرَاطًا سَوِيًّا43
父よ,あなたが授かっていない知識が,今,確かにわたしに下った。だからわたしに従いなさい。わたしはあなたを正しい道に導くでしょう。
يَا أَبَتِ لَا تَعْبُدِ الشَّيْطَانَ ۖ إِنَّ الشَّيْطَانَ كَانَ لِلرَّحْمَـٰنِ عَصِيًّا44
父よ,悪魔に仕えてはなりません。本当に悪魔は慈悲深き御方に対する謀叛者です。
يَا أَبَتِ إِنِّي أَخَافُ أَنْ يَمَسَّكَ عَذَابٌ مِنَ الرَّحْمَـٰنِ فَتَكُونَ لِلشَّيْطَانِ وَلِيًّا45
父よ,本当にわたしは慈悲深き御方からの懲罰が,あなたに下ることを恐れます。それであなたが,悪魔の友になることを心配しています。」
قَالَ أَرَاغِبٌ أَنْتَ عَنْ آلِهَتِي يَا إِبْرَاهِيمُ ۖ لَئِنْ لَمْ تَنْتَهِ لَأَرْجُمَنَّكَ ۖ وَاهْجُرْنِي مَلِيًّا46
かれ(父)は言った。「イブラーヒームよ,あなたはわたしたちの神々を拒否するのか。もしそれを止めないなら,必ずあなたを石打ちにするであろう。さあ永久にわたしから離れ去れ。」
قَالَ سَلَامٌ عَلَيْكَ ۖ سَأَسْتَغْفِرُ لَكَ رَبِّي ۖ إِنَّهُ كَانَ بِي حَفِيًّا47
かれは言った。「あなたに平安あれ。わたしの主に,あなたのため御赦しを祈る。本当にかれは,わたしに対し慈悲深くあられます。
وَأَعْتَزِلُكُمْ وَمَا تَدْعُونَ مِنْ دُونِ اللَّهِ وَأَدْعُو رَبِّي عَسَىٰ أَلَّا أَكُونَ بِدُعَاءِ رَبِّي شَقِيًّا48
わたしはあなたがたから離れ,またアッラー以外にあなたがたが祈るものから離れて,わたしの主に祈ります。わたしの主に御祈りすれば,恐らく(主の)御恵みのないめにあわないでしょう。」
فَلَمَّا اعْتَزَلَهُمْ وَمَا يَعْبُدُونَ مِنْ دُونِ اللَّهِ وَهَبْنَا لَهُ إِسْحَاقَ وَيَعْقُوبَ ۖ وَكُلًّا جَعَلْنَا نَبِيًّا49
それでかれ(イブラーヒーム)が,かれらとアッラー以外にかれらが仕えるものから離れ去った時,われはかれにイスハークとヤアコーブを授けた。そしてわれはかれらをそれぞれ預言者にした。
وَوَهَبْنَا لَهُمْ مِنْ رَحْمَتِنَا وَجَعَلْنَا لَهُمْ لِسَانَ صِدْقٍ عَلِيًّا50
われは,かれらの上に慈悲を垂れ,また崇高な其実を伝える舌を授けた。
وَاذْكُرْ فِي الْكِتَابِ مُوسَىٰ ۚ إِنَّهُ كَانَ مُخْلَصًا وَكَانَ رَسُولًا نَبِيًّا51
またこの啓典の中で,ムーサーのことを述べよ。本当にかれは,誠実であり,使徒であり預言者であった。
وَنَادَيْنَاهُ مِنْ جَانِبِ الطُّورِ الْأَيْمَنِ وَقَرَّبْنَاهُ نَجِيًّا52
われは(シナイ)山の右がわからかれに呼びかけ,密談のためわれの近くに招き寄せた。
وَوَهَبْنَا لَهُ مِنْ رَحْمَتِنَا أَخَاهُ هَارُونَ نَبِيًّا53
またわれの慈悲により,その兄のハールーンを,預言者としてかれに授けた。
وَاذْكُرْ فِي الْكِتَابِ إِسْمَاعِيلَ ۚ إِنَّهُ كَانَ صَادِقَ الْوَعْدِ وَكَانَ رَسُولًا نَبِيًّا54
またイスマーイールのことを,この啓典の中で述べよ。本当にかれは約束したことに忠実で,使徒であり預言者であった。
وَكَانَ يَأْمُرُ أَهْلَهُ بِالصَّلَاةِ وَالزَّكَاةِ وَكَانَ عِنْدَ رَبِّهِ مَرْضِيًّا55
かれはいつもその一族に,礼拝と喜捨を命令し,主の愛される一人であった。
وَاذْكُرْ فِي الْكِتَابِ إِدْرِيسَ ۚ إِنَّهُ كَانَ صِدِّيقًا نَبِيًّا56
またイドリースのことを,この啓典の中で述べよ。かれは正直な人物であり預言者であった。
وَرَفَعْنَاهُ مَكَانًا عَلِيًّا57
そしてわれはかれを高い地位に挙げた。
أُولَـٰئِكَ الَّذِينَ أَنْعَمَ اللَّهُ عَلَيْهِمْ مِنَ النَّبِيِّينَ مِنْ ذُرِّيَّةِ آدَمَ وَمِمَّنْ حَمَلْنَا مَعَ نُوحٍ وَمِنْ ذُرِّيَّةِ إِبْرَاهِيمَ وَإِسْرَائِيلَ وَمِمَّنْ هَدَيْنَا وَاجْتَبَيْنَا ۚ إِذَا تُتْلَىٰ عَلَيْهِمْ آيَاتُ الرَّحْمَـٰنِ خَرُّوا سُجَّدًا وَبُكِيًّا ۩58
これらの者は,アッラーが恩恵を施された預言者たちで,アーダムの子孫で,われがヌーフと一緒に(方舟で)運んだ者たちの子孫であり,またイブラーヒームとイスラーイール(ヤアコーブ)の子孫の中,われが選んで導いた者たちである。慈悲深き御方の印がかれらに読誦される度に,かれらは伏してサジダし涙を流す。〔サジダ〕
فَخَلَفَ مِنْ بَعْدِهِمْ خَلْفٌ أَضَاعُوا الصَّلَاةَ وَاتَّبَعُوا الشَّهَوَاتِ ۖ فَسَوْفَ يَلْقَوْنَ غَيًّا59
それなのにかれらの後継者が礼拝を怠り,私欲に耽ったので,やがて破滅に当面することになるであろう。
إِلَّا مَنْ تَابَ وَآمَنَ وَعَمِلَ صَالِحًا فَأُولَـٰئِكَ يَدْخُلُونَ الْجَنَّةَ وَلَا يُظْلَمُونَ شَيْئًا60
だが梅悟して信仰し,善行に動しむ者は別である。これらの者は楽園に入り,少しも不当な扱いを受けることはないであろう。
جَنَّاتِ عَدْنٍ الَّتِي وَعَدَ الرَّحْمَـٰنُ عِبَادَهُ بِالْغَيْبِ ۚ إِنَّهُ كَانَ وَعْدُهُ مَأْتِيًّا61
アドン(エデン)の楽園,それは信じていても目には見えないものだが,慈悲深い御方がそのしもべたちに約束なされたものである。本当にかれの約束は,いつも完遂される。
لَا يَسْمَعُونَ فِيهَا لَغْوًا إِلَّا سَلَامًا ۖ وَلَهُمْ رِزْقُهُمْ فِيهَا بُكْرَةً وَعَشِيًّا62
かれらはそこでは無用の話を聞かず,只々「平安あれ。」(と言う語を聞く)だけであろう。かれらは朝な夕な,そこで御恵みを与えられる。
تِلْكَ الْجَنَّةُ الَّتِي نُورِثُ مِنْ عِبَادِنَا مَنْ كَانَ تَقِيًّا63
これが楽園である。主を畏れたわがしもベに継がせる所である。
وَمَا نَتَنَزَّلُ إِلَّا بِأَمْرِ رَبِّكَ ۖ لَهُ مَا بَيْنَ أَيْدِينَا وَمَا خَلْفَنَا وَمَا بَيْنَ ذَٰلِكَ ۚ وَمَا كَانَ رَبُّكَ نَسِيًّا64
(天使たちは言う。)「わたしたちは,主の御命令による外は下らない。わたしたち以前のこと,わたしたち以後のこと,またその間の凡てのことは,かれの統べられるところ。あなたがたの主は決して忘れられない。
رَبُّ السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضِ وَمَا بَيْنَهُمَا فَاعْبُدْهُ وَاصْطَبِرْ لِعِبَادَتِهِ ۚ هَلْ تَعْلَمُ لَهُ سَمِيًّا65
(かれは)天と地,またその間にある凡ての有の主であられる。だからかれに仕え,かれへの奉仕のために耐え忍びなさい。あなたはかれと肩を並べ呼ぶものを(外に)知っているのか。」
وَيَقُولُ الْإِنْسَانُ أَإِذَا مَا مِتُّ لَسَوْفَ أُخْرَجُ حَيًّا66
人は言う。「一体わたしが死んだ時,やがて甦るのであろうか。」
أَوَلَا يَذْكُرُ الْإِنْسَانُ أَنَّا خَلَقْنَاهُ مِنْ قَبْلُ وَلَمْ يَكُ شَيْئًا67
人は思わないのか。われは以前何も無いところから,かれ(人間)を創ったのである。
فَوَرَبِّكَ لَنَحْشُرَنَّهُمْ وَالشَّيَاطِينَ ثُمَّ لَنُحْضِرَنَّهُمْ حَوْلَ جَهَنَّمَ جِثِيًّا68
それであなたの主によって,われはかれらそして悪魔たちを必ず召集する。それからわれは,必ずかれらを地獄の周囲に引きたて(かれらを恐れ戦かせ)脆かせよう。
ثُمَّ لَنَنْزِعَنَّ مِنْ كُلِّ شِيعَةٍ أَيُّهُمْ أَشَدُّ عَلَى الرَّحْمَـٰنِ عِتِيًّا69
それからわれは,各宗派から慈悲深き御方に背くことの甚しい者を,必ず(側に)抜き出す。
ثُمَّ لَنَحْنُ أَعْلَمُ بِالَّذِينَ هُمْ أَوْلَىٰ بِهَا صِلِيًّا70
その時誰がそこで焼かれるに相応しいかを熟知するのは,正にわれである。
وَإِنْ مِنْكُمْ إِلَّا وَارِدُهَا ۚ كَانَ عَلَىٰ رَبِّكَ حَتْمًا مَقْضِيًّا71
そしてあなたがたの中一人もそれを通り越せない。これはあなたがたの主が,成し遂げられる御神命である。
ثُمَّ نُنَجِّي الَّذِينَ اتَّقَوْا وَنَذَرُ الظَّالِمِينَ فِيهَا جِثِيًّا72
しかしわれは主を畏れる敬虔な者を救い,不義を行った者は跪いたままで放って置こう。
وَإِذَا تُتْلَىٰ عَلَيْهِمْ آيَاتُنَا بَيِّنَاتٍ قَالَ الَّذِينَ كَفَرُوا لِلَّذِينَ آمَنُوا أَيُّ الْفَرِيقَيْنِ خَيْرٌ مَقَامًا وَأَحْسَنُ نَدِيًّا73
わが公明な印がかれらに読誦される時,信じない者たちは信仰する者に向かって,「どちらが地位において高く,またどちらが気前がいいか」などという。
وَكَمْ أَهْلَكْنَا قَبْلَهُمْ مِنْ قَرْنٍ هُمْ أَحْسَنُ أَثَاثًا وَرِئْيًا74
だがわれは如何に物資の豊富な,また見せかけの輝かしい多くの世代を,かれら以前に滅ぼしたことであろうか。
قُلْ مَنْ كَانَ فِي الضَّلَالَةِ فَلْيَمْدُدْ لَهُ الرَّحْمَـٰنُ مَدًّا ۚ حَتَّىٰ إِذَا رَأَوْا مَا يُوعَدُونَ إِمَّا الْعَذَابَ وَإِمَّا السَّاعَةَ فَسَيَعْلَمُونَ مَنْ هُوَ شَرٌّ مَكَانًا وَأَضْعَفُ جُنْدًا75
言ってやるがいい。「迷っている者でも慈悲深い御方はかれらに対し命を延ばされる。だがそれもかれらが警告されたことを見る時,つまり罰せられるか,それとも(審判の)時になるまでである。やがてかれらは,どちらがより酷い立場であり,どちらが弱い勢力であるかを知るであろう。」
وَيَزِيدُ اللَّهُ الَّذِينَ اهْتَدَوْا هُدًى ۗ وَالْبَاقِيَاتُ الصَّالِحَاتُ خَيْرٌ عِنْدَ رَبِّكَ ثَوَابًا وَخَيْرٌ مَرَدًّا76
アッラーは導きを求める者に対し,御導きを増やされる。そして朽ちすたれない善行は,主の御許では報奨において優れ,また帰り所において優る。
أَفَرَأَيْتَ الَّذِي كَفَرَ بِآيَاتِنَا وَقَالَ لَأُوتَيَنَّ مَالًا وَوَلَدًا77
あなたはわが印を拒否した者を見たか。だがかれは,「わたしは富と子孫とに,きっと恵まれるであろう。」と言う。
أَطَّلَعَ الْغَيْبَ أَمِ اتَّخَذَ عِنْدَ الرَّحْمَـٰنِ عَهْدًا78
かれは幽玄界を見とどけたのか。それとも慈悲深い御方の何らかの約束を得たのか。
كَلَّا ۚ سَنَكْتُبُ مَا يَقُولُ وَنَمُدُّ لَهُ مِنَ الْعَذَابِ مَدًّا79
いや決してそうではない。われはかれの言うことを記録し,かれに対する懲罰を延ばすであろう。
وَنَرِثُهُ مَا يَقُولُ وَيَأْتِينَا فَرْدًا80
かれらの言っていることは凡てわれが引き取り,かれは只一人でわが許に来るであろう。
وَاتَّخَذُوا مِنْ دُونِ اللَّهِ آلِهَةً لِيَكُونُوا لَهُمْ عِزًّا81
かれらはアッラーの外に神々を立て,かれらを仲裁者にしようとしている。
كَلَّا ۚ سَيَكْفُرُونَ بِعِبَادَتِهِمْ وَيَكُونُونَ عَلَيْهِمْ ضِدًّا82
決してそうではない。かれら(神々)はその崇拝を拒否し,かれらに対し敵になろう。
أَلَمْ تَرَ أَنَّا أَرْسَلْنَا الشَّيَاطِينَ عَلَى الْكَافِرِينَ تَؤُزُّهُمْ أَزًّا83
かれらを唆すために,われが不信心者に対し悪魔たちを遺わしているのをあなたは気が付かないのか。
فَلَا تَعْجَلْ عَلَيْهِمْ ۖ إِنَّمَا نَعُدُّ لَهُمْ عَدًّا84
だからかれらに対し性急であってはならない。われは只々かれらのために(限られた猶予の日)数を数えるだけである。
يَوْمَ نَحْشُرُ الْمُتَّقِينَ إِلَى الرَّحْمَـٰنِ وَفْدًا85
その日,われは主を畏れる者を(名誉の)使節を迎えるように慈悲深き御方(の御許)に集め,
وَنَسُوقُ الْمُجْرِمِينَ إِلَىٰ جَهَنَّمَ وِرْدًا86
われは罪深い者を,獣の群を水に追うように,地獄に追いたてる。
لَا يَمْلِكُونَ الشَّفَاعَةَ إِلَّا مَنِ اتَّخَذَ عِنْدَ الرَّحْمَـٰنِ عَهْدًا87
慈悲深き御方から御許しを得た者の外は,誰も執り成す力を持たないであろう。
وَقَالُوا اتَّخَذَ الرَّحْمَـٰنُ وَلَدًا88
またかれらは言う。「慈悲深き御方は子を設けられる。」
لَقَدْ جِئْتُمْ شَيْئًا إِدًّا89
確かにあなたがたは,酷いことを言うものである。
تَكَادُ السَّمَاوَاتُ يَتَفَطَّرْنَ مِنْهُ وَتَنْشَقُّ الْأَرْضُ وَتَخِرُّ الْجِبَالُ هَدًّا90
天は裂けようとし,地は割れて切々になり,山々は崩れ落ちよう。
أَنْ دَعَوْا لِلرَّحْمَـٰنِ وَلَدًا91
それはかれらが,慈悲深き御方に対し,(ありもしない)子の名を(執り成すものとして)唱えたためである。
وَمَا يَنْبَغِي لِلرَّحْمَـٰنِ أَنْ يَتَّخِذَ وَلَدًا92
子を設けられることは,慈悲深き御方にはありえない。
إِنْ كُلُّ مَنْ فِي السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضِ إِلَّا آتِي الرَّحْمَـٰنِ عَبْدًا93
天と地において,慈悲深き御方のしもべとして,罷り出ない者は唯の1人もないのである。
لَقَدْ أَحْصَاهُمْ وَعَدَّهُمْ عَدًّا94
本当にかれは,かれらの(すべて)を計算し,かれらの数を数えられる。
وَكُلُّهُمْ آتِيهِ يَوْمَ الْقِيَامَةِ فَرْدًا95
また審判の日には,かれらは各々一人でかれの御許に罷り出る。
إِنَّ الَّذِينَ آمَنُوا وَعَمِلُوا الصَّالِحَاتِ سَيَجْعَلُ لَهُمُ الرَّحْمَـٰنُ وُدًّا96
信仰して善行に励む者には,慈悲深い御方は,かれらに慈しみを与えるであろう。
فَإِنَّمَا يَسَّرْنَاهُ بِلِسَانِكَ لِتُبَشِّرَ بِهِ الْمُتَّقِينَ وَتُنْذِرَ بِهِ قَوْمًا لُدًّا97
われが(クルアーン)をあなたの言葉(アラビア語)で下し分りやすくしたのは,あなたが,主を畏れる者に吉報を伝え,議論好きの者に警告するためである。
وَكَمْ أَهْلَكْنَا قَبْلَهُمْ مِنْ قَرْنٍ هَلْ تُحِسُّ مِنْهُمْ مِنْ أَحَدٍ أَوْ تَسْمَعُ لَهُمْ رِكْزًا98
われは,かれら以前に如何に多くの世代を滅ぼしたことであろう。あなたは(今),それらの中の一人でも見かけられるのか。またはかれらの囁きを聞くことが出来るのか。
ター・ハー
بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَٰنِ الرَّحِيمِ
طه1
ター・ハー。
مَا أَنْزَلْنَا عَلَيْكَ الْقُرْآنَ لِتَشْقَىٰ2
われがあなたにクルアーンを下したのは,あなたを悩ますためではない。
إِلَّا تَذْكِرَةً لِمَنْ يَخْشَىٰ3
主を畏れる者への,訓戒に外ならない。
تَنْزِيلًا مِمَّنْ خَلَقَ الْأَرْضَ وَالسَّمَاوَاتِ الْعُلَى4
大地と高い諸天とを創りなされる,かれから下された啓示である。
الرَّحْمَـٰنُ عَلَى الْعَرْشِ اسْتَوَىٰ5
慈悲深き御方は,玉座に鎮座なされる。
لَهُ مَا فِي السَّمَاوَاتِ وَمَا فِي الْأَرْضِ وَمَا بَيْنَهُمَا وَمَا تَحْتَ الثَّرَىٰ6
天にあり地にあるもの,そしてその間にある凡てのもの,また,湿った土の下にあるものは,凡てかれのものである。
وَإِنْ تَجْهَرْ بِالْقَوْلِ فَإِنَّهُ يَعْلَمُ السِّرَّ وَأَخْفَى7
仮令あなたが大声で話しても(関りなく),かれは,秘められたことも隠されていることも知っておられる。
اللَّهُ لَا إِلَـٰهَ إِلَّا هُوَ ۖ لَهُ الْأَسْمَاءُ الْحُسْنَىٰ8
アッラー,かれの外に神はないのである。最も美しい御名はかれに属する。
وَهَلْ أَتَاكَ حَدِيثُ مُوسَىٰ9
ムーサーの物語が,あなたに届いたか。
إِذْ رَأَىٰ نَارًا فَقَالَ لِأَهْلِهِ امْكُثُوا إِنِّي آنَسْتُ نَارًا لَعَلِّي آتِيكُمْ مِنْهَا بِقَبَسٍ أَوْ أَجِدُ عَلَى النَّارِ هُدًى10
かれが火を見て,家族に言った時のことを思いなさい。「留まれ,わたしは火を見た。多分あそこから,火把を持ち帰ることが出来よう。あるいはあの火で,導かれるかもしれない。」
فَلَمَّا أَتَاهَا نُودِيَ يَا مُوسَىٰ11
だがかれがそこに来た時,声があって呼ばれた。「ムーサーよ,
إِنِّي أَنَا رَبُّكَ فَاخْلَعْ نَعْلَيْكَ ۖ إِنَّكَ بِالْوَادِ الْمُقَدَّسِ طُوًى12
本当にわれはあなたの主である。だから靴を脱げ。今あなたは,トワーの聖谷にいるのである。
وَأَنَا اخْتَرْتُكَ فَاسْتَمِعْ لِمَا يُوحَىٰ13
われはあなたを選んだ。だから(あなたに)啓示することを聞け。
إِنَّنِي أَنَا اللَّهُ لَا إِلَـٰهَ إِلَّا أَنَا فَاعْبُدْنِي وَأَقِمِ الصَّلَاةَ لِذِكْرِي14
本当にわれはアッラーである。われの外に神はない。だからわれに仕え,われを心に抱いて礼拝の務めを守れ。
إِنَّ السَّاعَةَ آتِيَةٌ أَكَادُ أُخْفِيهَا لِتُجْزَىٰ كُلُّ نَفْسٍ بِمَا تَسْعَىٰ15
確かに(終末の)時は来るのであるが,それを秘めて置きたいのは,各人が努力したところに応じ,報いを受けさせるためである。
فَلَا يَصُدَّنَّكَ عَنْهَا مَنْ لَا يُؤْمِنُ بِهَا وَاتَّبَعَ هَوَاهُ فَتَرْدَىٰ16
だから,これを信じないで自分の欲望に従う者たちから遠ざかり,あなたを破滅から救え。
وَمَا تِلْكَ بِيَمِينِكَ يَا مُوسَىٰ17
あなたの右手にあるそれは何か,ムーサーよ。」
قَالَ هِيَ عَصَايَ أَتَوَكَّأُ عَلَيْهَا وَأَهُشُّ بِهَا عَلَىٰ غَنَمِي وَلِيَ فِيهَا مَآرِبُ أُخْرَىٰ18
かれは申し上げた。「これは杖です。わたしはこれに(先?)れ,また羊のためにこれで(木の葉を)打ち落し,また,その外の用に供します。」
قَالَ أَلْقِهَا يَا مُوسَىٰ19
かれは仰せられた。「ムーサーよ,それを投げよ。」
فَأَلْقَاهَا فَإِذَا هِيَ حَيَّةٌ تَسْعَىٰ20
かれがそれを投げたところ,即座にそれは蛇になって,這い回った。
قَالَ خُذْهَا وَلَا تَخَفْ ۖ سَنُعِيدُهَا سِيرَتَهَا الْأُولَىٰ21
かれは仰せられた。「それを押えよ。恐れてはならない。われはそれを元のように返すであろう。
وَاضْمُمْ يَدَكَ إِلَىٰ جَنَاحِكَ تَخْرُجْ بَيْضَاءَ مِنْ غَيْرِ سُوءٍ آيَةً أُخْرَىٰ22
それからあなたの手を,腋の下に入れよ。何の障りもないのに,それは白くなろう。これは今一つの印。
لِنُرِيَكَ مِنْ آيَاتِنَا الْكُبْرَى23
われが更に大きい印を,あなたに示すためである。
اذْهَبْ إِلَىٰ فِرْعَوْنَ إِنَّهُ طَغَىٰ24
あなたはフィルアウンのもとに行け。本当にかれは高慢非道である。」
قَالَ رَبِّ اشْرَحْ لِي صَدْرِي25
かれは(祈って)言った。「主よ,わたしの胸を広げて下さい。
وَيَسِّرْ لِي أَمْرِي26
わたしの仕事を容易にして下さい。
وَاحْلُلْ عُقْدَةً مِنْ لِسَانِي27
わたしの舌の(縫?)れをほぐして,
يَفْقَهُوا قَوْلِي28
わたしの言葉を,かれらに分らせて下さい。
وَاجْعَلْ لِي وَزِيرًا مِنْ أَهْلِي29
またわたしの家族の中から,援助者を御授け下さい。
هَارُونَ أَخِي30
わたしの兄弟,ハールーンを,
اشْدُدْ بِهِ أَزْرِي31
わたしに加勢し,
وَأَشْرِكْهُ فِي أَمْرِي32
わたしの仕事に協力するようにさせて下さい。
كَيْ نُسَبِّحَكَ كَثِيرًا33
それはわたしたちが,あなたを多く讃え,
وَنَذْكُرَكَ كَثِيرًا34
また不断にあなたを念ずるためであります。
إِنَّكَ كُنْتَ بِنَا بَصِيرًا35
本当にあなたこそ,わたしたちを見守り下される方であります。」
قَالَ قَدْ أُوتِيتَ سُؤْلَكَ يَا مُوسَىٰ36
かれは仰せられた。「ムーサーよ,本当にあなたの願いは聞き届けられた。
وَلَقَدْ مَنَنَّا عَلَيْكَ مَرَّةً أُخْرَىٰ37
われは,この前にもあなたに恵みを施した。
إِذْ أَوْحَيْنَا إِلَىٰ أُمِّكَ مَا يُوحَىٰ38
その時は,わが意志をあなたの母に伝えた。
أَنِ اقْذِفِيهِ فِي التَّابُوتِ فَاقْذِفِيهِ فِي الْيَمِّ فَلْيُلْقِهِ الْيَمُّ بِالسَّاحِلِ يَأْخُذْهُ عَدُوٌّ لِي وَعَدُوٌّ لَهُ ۚ وَأَلْقَيْتُ عَلَيْكَ مَحَبَّةً مِنِّي وَلِتُصْنَعَ عَلَىٰ عَيْنِي39
『(その子を)箱の中に入れて,川に投げよ。川がかれを岸にうち上げ,われの敵であり,またこの子の敵が拾い上げよう。』そしてあなたの上に,われの愛を注ぎかける。それでわれの目(保護)のもとで育てられることになろう。
إِذْ تَمْشِي أُخْتُكَ فَتَقُولُ هَلْ أَدُلُّكُمْ عَلَىٰ مَنْ يَكْفُلُهُ ۖ فَرَجَعْنَاكَ إِلَىٰ أُمِّكَ كَيْ تَقَرَّ عَيْنُهَا وَلَا تَحْزَنَ ۚ وَقَتَلْتَ نَفْسًا فَنَجَّيْنَاكَ مِنَ الْغَمِّ وَفَتَنَّاكَ فُتُونًا ۚ فَلَبِثْتَ سِنِينَ فِي أَهْلِ مَدْيَنَ ثُمَّ جِئْتَ عَلَىٰ قَدَرٍ يَا مُوسَىٰ40
その時あなたの姉が,罷り出て,『わたしが(その子を)育てる者を,御教えしましょうか。』と言った。こうしてわれは,母の手にあなたを返し,それでかの女も満足し,悲しみも消えた。またあなたは人を殺した。だがわれは苦悩からあなたを救い,いろいろとあなたを試みた。それから数年の間,マドヤンの民の中に滞在し,それから定められたように,あなたはここに来たのであろ。ムーサーよ。
وَاصْطَنَعْتُكَ لِنَفْسِي41
われはあなたをわれ(に奉仕させる)ために,育てあげた。
اذْهَبْ أَنْتَ وَأَخُوكَ بِآيَاتِي وَلَا تَنِيَا فِي ذِكْرِي42
あなたと兄弟は,われの印を携えて行け。そしてわれを念ずることを怠ってはならない。
اذْهَبَا إِلَىٰ فِرْعَوْنَ إِنَّهُ طَغَىٰ43
あなたがた両人はフィルアウンの許に行け。本当にかれは高慢非道である。
فَقُولَا لَهُ قَوْلًا لَيِّنًا لَعَلَّهُ يَتَذَكَّرُ أَوْ يَخْشَىٰ44
だがかれにもの静かな説き方で語れ。かれは訓戒を受け入れるか,またはわれを恐れるであろう。」
قَالَا رَبَّنَا إِنَّنَا نَخَافُ أَنْ يَفْرُطَ عَلَيْنَا أَوْ أَنْ يَطْغَىٰ45
かれら両人は言った。「主よ,本当にかれが急いでわたしたちに(害を加え)また法外のことをするのを恐れます。」
قَالَ لَا تَخَافَا ۖ إِنَّنِي مَعَكُمَا أَسْمَعُ وَأَرَىٰ46
かれは仰せられた。「恐れることはない。本当にわれは,あなたがたと一緒にいる。聞いており見ているのである。
فَأْتِيَاهُ فَقُولَا إِنَّا رَسُولَا رَبِّكَ فَأَرْسِلْ مَعَنَا بَنِي إِسْرَائِيلَ وَلَا تُعَذِّبْهُمْ ۖ قَدْ جِئْنَاكَ بِآيَةٍ مِنْ رَبِّكَ ۖ وَالسَّلَامُ عَلَىٰ مَنِ اتَّبَعَ الْهُدَىٰ47
だからあなたがた両人は行って,かれに言ってやるがいい。『本当にわたしたちは,あなたの主の使徒である。だからわたしたちと一緒にイスラエルの子孫たちを釈放し,かれらを苦しめてはならない。本当にわたしたちは,印を持ってあなたの主から来た者である。御導きに従う者は,平安である。
إِنَّا قَدْ أُوحِيَ إِلَيْنَا أَنَّ الْعَذَابَ عَلَىٰ مَنْ كَذَّبَ وَتَوَلَّىٰ48
本当にわたしたちに,確かに啓示されたのである。拒否する者また背き去る者には懲罰(が待ち構えているだけである)。』」
قَالَ فَمَنْ رَبُّكُمَا يَا مُوسَىٰ49
かれ(フィルアウン)は言った。「ムーサーよ,あなたがたの主は誰であるのか。」
قَالَ رَبُّنَا الَّذِي أَعْطَىٰ كُلَّ شَيْءٍ خَلْقَهُ ثُمَّ هَدَىٰ50
かれは(答えて)言った。「わたしたちの主こそは,万有を創造し,一人一人に(姿や資質その外を)賦与され,更に導きを与える方である。」
قَالَ فَمَا بَالُ الْقُرُونِ الْأُولَىٰ51
かれ(フィルアウン)は言った。「それなら過ぎ去った世代の者はどうなるのか。」
قَالَ عِلْمُهَا عِنْدَ رَبِّي فِي كِتَابٍ ۖ لَا يَضِلُّ رَبِّي وَلَا يَنْسَى52
かれは言った。「それに関する知識は,書冊に記されて主の御許にあります。わたしの主は,誤りを犯すこともなく,忘れることもありません。
الَّذِي جَعَلَ لَكُمُ الْأَرْضَ مَهْدًا وَسَلَكَ لَكُمْ فِيهَا سُبُلًا وَأَنْزَلَ مِنَ السَّمَاءِ مَاءً فَأَخْرَجْنَا بِهِ أَزْوَاجًا مِنْ نَبَاتٍ شَتَّىٰ53
かれは,大地をあなたがたの臥床とされ,あなたがたのため,そこに道を縦横につけ,また天から雨を降らせられる。それによって,われはそれぞれの異なった雌雄の植物を生長させる。
كُلُوا وَارْعَوْا أَنْعَامَكُمْ ۗ إِنَّ فِي ذَٰلِكَ لَآيَاتٍ لِأُولِي النُّهَىٰ54
食べ,またあなたがたの家畜を放牧しなさい。本当にその中には,理知ある者への種々の印がある。
مِنْهَا خَلَقْنَاكُمْ وَفِيهَا نُعِيدُكُمْ وَمِنْهَا نُخْرِجُكُمْ تَارَةً أُخْرَىٰ55
われは,それ(泥)からあなたがたを創り,それにあなたがたを帰らせ,またそれから今一度引き出すのである。」
وَلَقَدْ أَرَيْنَاهُ آيَاتِنَا كُلَّهَا فَكَذَّبَ وَأَبَىٰ56
われはかれ(フィルアウン)に,凡てのわが印を示したのだが,かれは虚偽であるとして拒否した。
قَالَ أَجِئْتَنَا لِتُخْرِجَنَا مِنْ أَرْضِنَا بِسِحْرِكَ يَا مُوسَىٰ57
かれは言った。「ムーサーよ,あなたがたは魔術で,この国からわたしたちを追い出すために来たのか。
فَلَنَأْتِيَنَّكَ بِسِحْرٍ مِثْلِهِ فَاجْعَلْ بَيْنَنَا وَبَيْنَكَ مَوْعِدًا لَا نُخْلِفُهُ نَحْنُ وَلَا أَنْتَ مَكَانًا سُوًى58
それなら,わたしたちもそのような魔術をあなたに持ち出そう。さあ,わたしたちとあなたの間で約束して公開の場所を定め,わたしたちもあなたもそれを違えないようにしよう。」
قَالَ مَوْعِدُكُمْ يَوْمُ الزِّينَةِ وَأَنْ يُحْشَرَ النَّاسُ ضُحًى59
かれ(ムーサー)は言った。「あなたとの会合の約束は,祭の日である。人びとを昼前に御集め下さい。」
فَتَوَلَّىٰ فِرْعَوْنُ فَجَمَعَ كَيْدَهُ ثُمَّ أَتَىٰ60
そこでフィルアウンは引き取り,やがて計画を練って(返って)来た。
قَالَ لَهُمْ مُوسَىٰ وَيْلَكُمْ لَا تَفْتَرُوا عَلَى اللَّهِ كَذِبًا فَيُسْحِتَكُمْ بِعَذَابٍ ۖ وَقَدْ خَابَ مَنِ افْتَرَىٰ61
ムーサーはかれらに言った。「あなたがたは災いに会うだろう。かれがあなたがたを処罰して滅ぼされることのないよう,アッラーに対し捏造し,嘘を言ってはならない。(嘘を)捏造する者は必ず失敗する。」
فَتَنَازَعُوا أَمْرَهُمْ بَيْنَهُمْ وَأَسَرُّوا النَّجْوَىٰ62
そこでかれらはお互いに策を練って論じあったが,勿論その相談は秘密にした。
قَالُوا إِنْ هَـٰذَانِ لَسَاحِرَانِ يُرِيدَانِ أَنْ يُخْرِجَاكُمْ مِنْ أَرْضِكُمْ بِسِحْرِهِمَا وَيَذْهَبَا بِطَرِيقَتِكُمُ الْمُثْلَىٰ63
かれらは言った。「確かに両人は魔術師である。かれらはあの魔術であなたがたを国土から追い出し,あなたがたの優れた習わしを根絶しようと望んでいる。
فَأَجْمِعُوا كَيْدَكُمْ ثُمَّ ائْتُوا صَفًّا ۚ وَقَدْ أَفْلَحَ الْيَوْمَ مَنِ اسْتَعْلَىٰ64
それで各自の計画を練り,それから列をなして集れ。今日勝利を得る者は,必ず栄えるのである。」
قَالُوا يَا مُوسَىٰ إِمَّا أَنْ تُلْقِيَ وَإِمَّا أَنْ نَكُونَ أَوَّلَ مَنْ أَلْقَىٰ65
かれらは言った。「ムーサーよ,あなたが投げるか,それともわたしたちが先に投げようか。」
قَالَ بَلْ أَلْقُوا ۖ فَإِذَا حِبَالُهُمْ وَعِصِيُّهُمْ يُخَيَّلُ إِلَيْهِ مِنْ سِحْرِهِمْ أَنَّهَا تَسْعَىٰ66
かれ(ムーサー)は言った。「いや,あなたがたが先に投げなさい。」すると見るがいい。かれには縄と杖が,魔術で(活きて)走るかのように見えた。
فَأَوْجَسَ فِي نَفْسِهِ خِيفَةً مُوسَىٰ67
それでムーサーは,少し心に恐れを感じた。
قُلْنَا لَا تَخَفْ إِنَّكَ أَنْتَ الْأَعْلَىٰ68
われは言った。「恐れるには及ばない。本当にあなたが上手である。
وَأَلْقِ مَا فِي يَمِينِكَ تَلْقَفْ مَا صَنَعُوا ۖ إِنَّمَا صَنَعُوا كَيْدُ سَاحِرٍ ۖ وَلَا يُفْلِحُ السَّاحِرُ حَيْثُ أَتَىٰ69
あなたの右手にあるものを投げなさい。かれらが作ったものを呑み込め。魔術師の誤魔化しに過ぎない。魔術師は何処から来ても,(何事も)成功しない。」
فَأُلْقِيَ السَّحَرَةُ سُجَّدًا قَالُوا آمَنَّا بِرَبِّ هَارُونَ وَمُوسَىٰ70
そこで魔術師たちは,伏してサジダし,「わたしたちは,ムーサーとハールーンの主を信仰します。」と言った。
قَالَ آمَنْتُمْ لَهُ قَبْلَ أَنْ آذَنَ لَكُمْ ۖ إِنَّهُ لَكَبِيرُكُمُ الَّذِي عَلَّمَكُمُ السِّحْرَ ۖ فَلَأُقَطِّعَنَّ أَيْدِيَكُمْ وَأَرْجُلَكُمْ مِنْ خِلَافٍ وَلَأُصَلِّبَنَّكُمْ فِي جُذُوعِ النَّخْلِ وَلَتَعْلَمُنَّ أَيُّنَا أَشَدُّ عَذَابًا وَأَبْقَىٰ71
かれ(フィルアウン)は言った。「わたしが許さない中に,かれを信じるのか。本当にかれは,あなたがたに魔術を教えたあなたがたの頭目であろう。あなたがたの両手と両足を互い違いに切断して,ナツメヤシの幹に貼り付けにするであろう。あなたがたはどちらの懲罰がより厳重で,永続するか必ず分るであろう。」
قَالُوا لَنْ نُؤْثِرَكَ عَلَىٰ مَا جَاءَنَا مِنَ الْبَيِّنَاتِ وَالَّذِي فَطَرَنَا ۖ فَاقْضِ مَا أَنْتَ قَاضٍ ۖ إِنَّمَا تَقْضِي هَـٰذِهِ الْحَيَاةَ الدُّنْيَا72
かれら(魔術師)は言った。「わたしたちは,わたしたちに示された明白な印,またわたしたちを創造なされたかれ以上に,あなたを重んじることは不可能です。それであなたの決定されることを実施して下さい。だがあなたは,現世の生活においてだけ,判決なさるに過ぎません。
إِنَّا آمَنَّا بِرَبِّنَا لِيَغْفِرَ لَنَا خَطَايَانَا وَمَا أَكْرَهْتَنَا عَلَيْهِ مِنَ السِّحْرِ ۗ وَاللَّهُ خَيْرٌ وَأَبْقَىٰ73
本当にわたしたちが主を信仰するのは,わたしたちの誤ちの御赦しを請い,またあなたが無理じいでした魔術に対して,御赦しを請うためであります。アッラーは至善にして永久に生きられる方であられます。」
إِنَّهُ مَنْ يَأْتِ رَبَّهُ مُجْرِمًا فَإِنَّ لَهُ جَهَنَّمَ لَا يَمُوتُ فِيهَا وَلَا يَحْيَىٰ74
罪人として主の御許に来る者には,本当に地獄がある。その中でかれは死もなく生もない。
وَمَنْ يَأْتِهِ مُؤْمِنًا قَدْ عَمِلَ الصَّالِحَاتِ فَأُولَـٰئِكَ لَهُمُ الدَّرَجَاتُ الْعُلَىٰ75
だが,多くの善行をして,信者としてかれの許に来た者には高い位階を与える。
جَنَّاتُ عَدْنٍ تَجْرِي مِنْ تَحْتِهَا الْأَنْهَارُ خَالِدِينَ فِيهَا ۚ وَذَٰلِكَ جَزَاءُ مَنْ تَزَكَّىٰ76
かれ(信者)は永遠に川が下を流れるアドン(エデン)の楽園に住むのである。これは,自分を純潔に守った者への報奨である。
وَلَقَدْ أَوْحَيْنَا إِلَىٰ مُوسَىٰ أَنْ أَسْرِ بِعِبَادِي فَاضْرِبْ لَهُمْ طَرِيقًا فِي الْبَحْرِ يَبَسًا لَا تَخَافُ دَرَكًا وَلَا تَخْشَىٰ77
われはムーサーに啓示した。「われのしもべたちと共に夜に旅立って,かれら(イスラエルの民)のために,海の中に乾いた道を(あなたの杖で)打ち開け。(フィルアウンの軍勢に)追い付かれることを心配するな。また(海を)柿がることはない。」
فَأَتْبَعَهُمْ فِرْعَوْنُ بِجُنُودِهِ فَغَشِيَهُمْ مِنَ الْيَمِّ مَا غَشِيَهُمْ78
果してフィルアウンは,軍勢を率いてかれら(イスラエルの民)を追ったが,海水がかれらを完全に水中に沈め覆ってしまった。
وَأَضَلَّ فِرْعَوْنُ قَوْمَهُ وَمَا هَدَىٰ79
(このように)フィルアウンはその民を迷わせ,正しく導かなかったのである。
يَا بَنِي إِسْرَائِيلَ قَدْ أَنْجَيْنَاكُمْ مِنْ عَدُوِّكُمْ وَوَاعَدْنَاكُمْ جَانِبَ الطُّورِ الْأَيْمَنَ وَنَزَّلْنَا عَلَيْكُمُ الْمَنَّ وَالسَّلْوَىٰ80
イスラエルの子孫よ,われはあなたがたを敵から救い,また(シナイ)山の右側であなたがたと約束を結び,マンナとウズラをあなたがたに下した。
كُلُوا مِنْ طَيِّبَاتِ مَا رَزَقْنَاكُمْ وَلَا تَطْغَوْا فِيهِ فَيَحِلَّ عَلَيْكُمْ غَضَبِي ۖ وَمَنْ يَحْلِلْ عَلَيْهِ غَضَبِي فَقَدْ هَوَىٰ81
(そしてわれは言った。)「われがあなたがたに授けた善いものを食べなさい。さりとてわれの怒りがあなたがたに下らないよう,法を越えてはならない。誰でもわれの怒りに触れる者は,必ず滅びる。
وَإِنِّي لَغَفَّارٌ لِمَنْ تَابَ وَآمَنَ وَعَمِلَ صَالِحًا ثُمَّ اهْتَدَىٰ82
だが梅悟して信仰し,善行に動しみ,その後(正しく)導かれる者には,われは度々寛容を示す。」
وَمَا أَعْجَلَكَ عَنْ قَوْمِكَ يَا مُوسَىٰ83
「ムーサーよ,何故あなたは,自分の民より離れ,先んじて急ぐのか。」
قَالَ هُمْ أُولَاءِ عَلَىٰ أَثَرِي وَعَجِلْتُ إِلَيْكَ رَبِّ لِتَرْضَىٰ84
かれは申し上げた。「かれらは,わたしの足跡を追って参ります。主よ,わたしはあなたが御喜びになるよう急いだのです。」
قَالَ فَإِنَّا قَدْ فَتَنَّا قَوْمَكَ مِنْ بَعْدِكَ وَأَضَلَّهُمُ السَّامِرِيُّ85
かれは仰せられた。「本当にわれはあなたの去った後あなたの民を試みたが,サーミリーがかれらを迷わせた。」
فَرَجَعَ مُوسَىٰ إِلَىٰ قَوْمِهِ غَضْبَانَ أَسِفًا ۚ قَالَ يَا قَوْمِ أَلَمْ يَعِدْكُمْ رَبُّكُمْ وَعْدًا حَسَنًا ۚ أَفَطَالَ عَلَيْكُمُ الْعَهْدُ أَمْ أَرَدْتُمْ أَنْ يَحِلَّ عَلَيْكُمْ غَضَبٌ مِنْ رَبِّكُمْ فَأَخْلَفْتُمْ مَوْعِدِي86
そこでムーサーは,怒り悲しんで民の許に帰り,言った。「わたしの人びとよ,あなたがたの主は,善い約束をあなたがたに結ばれなかったのですか。あなたがたには余りに長い約束のように思われたのですか。それとも主からの御怒りがあなたがたに下ることを望んだのですか。だからわたしとの約束を違えたのですか。」
قَالُوا مَا أَخْلَفْنَا مَوْعِدَكَ بِمَلْكِنَا وَلَـٰكِنَّا حُمِّلْنَا أَوْزَارًا مِنْ زِينَةِ الْقَوْمِ فَقَذَفْنَاهَا فَكَذَٰلِكَ أَلْقَى السَّامِرِيُّ87
かれらは言った。「わたしたちは自分に確かな根拠があって,あなたとの約束を破ったのではないのです。わたしたちはエジプト人の,装飾品の重荷を負わされたので,それを(火の中に)投げ入れたのです。サーミリーも投げ込んだようにです。」
فَأَخْرَجَ لَهُمْ عِجْلًا جَسَدًا لَهُ خُوَارٌ فَقَالُوا هَـٰذَا إِلَـٰهُكُمْ وَإِلَـٰهُ مُوسَىٰ فَنَسِيَ88
そこでかれ(サーミリー)は,かれら(イスラエルの民)のために,吼える仔牛の偶像を造った。そして言った。「これはあなたがたの神で,またムーサーの神です,かれは忘れたのです。」
أَفَلَا يَرَوْنَ أَلَّا يَرْجِعُ إِلَيْهِمْ قَوْلًا وَلَا يَمْلِكُ لَهُمْ ضَرًّا وَلَا نَفْعًا89
それは,一言もかれらに答えず,またかれらに害もなく益もないことが分らないのであろうか。
وَلَقَدْ قَالَ لَهُمْ هَارُونُ مِنْ قَبْلُ يَا قَوْمِ إِنَّمَا فُتِنْتُمْ بِهِ ۖ وَإِنَّ رَبَّكُمُ الرَّحْمَـٰنُ فَاتَّبِعُونِي وَأَطِيعُوا أَمْرِي90
ハールーンは(この事の)前に,充分にかれらに言った。「人びとよ。あなたがたはこれによって試みられるのです。主は,本当に慈悲深い方です。だからわたしに従い,わたしの命令に服従しなさい。」
قَالُوا لَنْ نَبْرَحَ عَلَيْهِ عَاكِفِينَ حَتَّىٰ يَرْجِعَ إِلَيْنَا مُوسَىٰ91
かれらは言った。「わたしたちは,ムーサーが帰って来るまで,(仔牛)を拝み続けるでしょう。」
قَالَ يَا هَارُونُ مَا مَنَعَكَ إِذْ رَأَيْتَهُمْ ضَلُّوا92
かれ(ムーサー)は言った。「ハールーンよ,かれらが迷うのを見た時,何があなた(の義務の履行)を妨げたのですか。
أَلَّا تَتَّبِعَنِ ۖ أَفَعَصَيْتَ أَمْرِي93
わたしに従わないのですか。わたしの命令に背くのですか。」
قَالَ يَا ابْنَ أُمَّ لَا تَأْخُذْ بِلِحْيَتِي وَلَا بِرَأْسِي ۖ إِنِّي خَشِيتُ أَنْ تَقُولَ فَرَّقْتَ بَيْنَ بَنِي إِسْرَائِيلَ وَلَمْ تَرْقُبْ قَوْلِي94
かれ(ハールーン)は言った。「わたしの母の子よ,わたしの髭や頭(の髪)を(楓?)むのを止めてください。本当にわたしはあなたが,『イスラエルの子孫の間を分裂させました。また自分の言葉を守りませんでした。』と言うのを恐れたのです。」
قَالَ فَمَا خَطْبُكَ يَا سَامِرِيُّ95
かれ(ムーサー)は言った。「ではサーミリーよ,あなたの(行ったことの)目的は何ですか。」
قَالَ بَصُرْتُ بِمَا لَمْ يَبْصُرُوا بِهِ فَقَبَضْتُ قَبْضَةً مِنْ أَثَرِ الرَّسُولِ فَنَبَذْتُهَا وَكَذَٰلِكَ سَوَّلَتْ لِي نَفْسِي96
かれは言った。「わたしは,かれらの見なかったものを見たのです。それで使徒の足跡から一握りの(土)を取って,それを(仔牛の像)に投げつけたのです。わたしの心が,そうわたしに示唆したのです。」
قَالَ فَاذْهَبْ فَإِنَّ لَكَ فِي الْحَيَاةِ أَنْ تَقُولَ لَا مِسَاسَ ۖ وَإِنَّ لَكَ مَوْعِدًا لَنْ تُخْلَفَهُ ۖ وَانْظُرْ إِلَىٰ إِلَـٰهِكَ الَّذِي ظَلْتَ عَلَيْهِ عَاكِفًا ۖ لَنُحَرِّقَنَّهُ ثُمَّ لَنَنْسِفَنَّهُ فِي الْيَمِّ نَسْفًا97
かれ(ムーサー)は言った。「出ていきなさい。生きている限りは,誰とも接触がなくなる。決して破れない約束(処罰)があなたにはある。あなたがのめり込んで崇拝していた神々を見なさい。わたしたちはこんなものは焼いて海の中にまき散らすでしょう。
إِنَّمَا إِلَـٰهُكُمُ اللَّهُ الَّذِي لَا إِلَـٰهَ إِلَّا هُوَ ۚ وَسِعَ كُلَّ شَيْءٍ عِلْمًا98
(人びとよ)本当にあなたがたの神はアッラーだけです。かれの外に神はないのです。かれは,凡てのものをその御知識に包容なされます。」
كَذَٰلِكَ نَقُصُّ عَلَيْكَ مِنْ أَنْبَاءِ مَا قَدْ سَبَقَ ۚ وَقَدْ آتَيْنَاكَ مِنْ لَدُنَّا ذِكْرًا99
このようにわれは,以前に起った消息をあなたに語り,わが許からあなたに訓戒を下した。
مَنْ أَعْرَضَ عَنْهُ فَإِنَّهُ يَحْمِلُ يَوْمَ الْقِيَامَةِ وِزْرًا100
誰でもそれに背く者は,復活の日に必ず重荷を負うであろう。
خَالِدِينَ فِيهِ ۖ وَسَاءَ لَهُمْ يَوْمَ الْقِيَامَةِ حِمْلًا101
かれらはいつまでもこの状態のままである。復活の日の重荷こそ,かれらにとり災いである。
يَوْمَ يُنْفَخُ فِي الصُّورِ ۚ وَنَحْشُرُ الْمُجْرِمِينَ يَوْمَئِذٍ زُرْقًا102
ラッパが吹かれる日,この日われは曇った目の罪深い者を招集する。
يَتَخَافَتُونَ بَيْنَهُمْ إِنْ لَبِثْتُمْ إِلَّا عَشْرًا103
かれらは囁きあって,「あなたがたは10(日)も滞在しなかったであろう。」と言う。
نَحْنُ أَعْلَمُ بِمَا يَقُولُونَ إِذْ يَقُولُ أَمْثَلُهُمْ طَرِيقَةً إِنْ لَبِثْتُمْ إِلَّا يَوْمًا104
われはかれらの言おうとすることをよく知っている。その時最も世故にたけた者が,「わたしたちの滞在は1日にもならない。」と言うであろう。
وَيَسْأَلُونَكَ عَنِ الْجِبَالِ فَقُلْ يَنْسِفُهَا رَبِّي نَسْفًا105
かれらは山に就いて,あなたに問うであろう。そこで言ってやるがいい。「わたしの主は,それを粉々にして捲き散らされる。
فَيَذَرُهَا قَاعًا صَفْصَفًا106
かれは,それを平らな平地になされ,
لَا تَرَىٰ فِيهَا عِوَجًا وَلَا أَمْتًا107
そこには,曲りも凹凸も見ないでしょう。」
يَوْمَئِذٍ يَتَّبِعُونَ الدَّاعِيَ لَا عِوَجَ لَهُ ۖ وَخَشَعَتِ الْأَصْوَاتُ لِلرَّحْمَـٰنِ فَلَا تَسْمَعُ إِلَّا هَمْسًا108
その日かれらは呼び手に従い逸れるわけにはいかない。慈悲深い御方の御前では,声は低くなり,忍び足の音の外は聞かないであろう。
يَوْمَئِذٍ لَا تَنْفَعُ الشَّفَاعَةُ إِلَّا مَنْ أَذِنَ لَهُ الرَّحْمَـٰنُ وَرَضِيَ لَهُ قَوْلًا109
その日,慈悲深い御方に御許しを得ている者以外の執り成しは無益であろう。その者の言葉は,かれに受け入れられる。
يَعْلَمُ مَا بَيْنَ أَيْدِيهِمْ وَمَا خَلْفَهُمْ وَلَا يُحِيطُونَ بِهِ عِلْمًا110
かれは,かれらの前にあること,後ろにあることを知っておられる。だがかれら(人間)の知識では,それを計り知ることは出来ない。
وَعَنَتِ الْوُجُوهُ لِلْحَيِّ الْقَيُّومِ ۖ وَقَدْ خَابَ مَنْ حَمَلَ ظُلْمًا111
かれらの顔は,永生し自存する御方の御前でうつむいているであろう。そして罪業を負うものに,浮ぶ瀬はない。
وَمَنْ يَعْمَلْ مِنَ الصَّالِحَاتِ وَهُوَ مُؤْمِنٌ فَلَا يَخَافُ ظُلْمًا وَلَا هَضْمًا112
だが善行に動しみ,信仰した者は,何の心配もなく,(主からの報奨を)減らされることもないのである。
وَكَذَٰلِكَ أَنْزَلْنَاهُ قُرْآنًا عَرَبِيًّا وَصَرَّفْنَا فِيهِ مِنَ الْوَعِيدِ لَعَلَّهُمْ يَتَّقُونَ أَوْ يُحْدِثُ لَهُمْ ذِكْرًا113
このように,われはこの啓示をアラビア語のクルア―ンとして下し,その中でいろいろと警告を伝えた。多分かれらは主を畏れ,または教訓を会得しよう。
فَتَعَالَى اللَّهُ الْمَلِكُ الْحَقُّ ۗ وَلَا تَعْجَلْ بِالْقُرْآنِ مِنْ قَبْلِ أَنْ يُقْضَىٰ إِلَيْكَ وَحْيُهُ ۖ وَقُلْ رَبِّ زِدْنِي عِلْمًا114
アッラーは,いと高くおられる真の王者である。あなた(預言者ムハンマド)に対する啓示が完了しない前に,クルアーンを急いではならない。寧ろ(祈って)言いなさい。「主よ,わたしの知識を深めて下さい。」
وَلَقَدْ عَهِدْنَا إِلَىٰ آدَمَ مِنْ قَبْلُ فَنَسِيَ وَلَمْ نَجِدْ لَهُ عَزْمًا115
われは,以前にアーダムに確と約束した。だがかれは(その履行を)忘れた。われは,かれがそれに堅固であるとは認めない。
وَإِذْ قُلْنَا لِلْمَلَائِكَةِ اسْجُدُوا لِآدَمَ فَسَجَدُوا إِلَّا إِبْلِيسَ أَبَىٰ116
われが天使たちに対し,「アーダムにサジダしなさい。」と言った時を思いなさい。イブリースの外かれらはサジダした。だがかれは拒否した。
فَقُلْنَا يَا آدَمُ إِنَّ هَـٰذَا عَدُوٌّ لَكَ وَلِزَوْجِكَ فَلَا يُخْرِجَنَّكُمَا مِنَ الْجَنَّةِ فَتَشْقَىٰ117
それでわれは言った。「アーダムよ,本当にこの者は,あなたとあなたの妻の敵である。それであなたがた両人はこの楽園から追い出されて,不幸に陥いらないよう気を付けなさい。
إِنَّ لَكَ أَلَّا تَجُوعَ فِيهَا وَلَا تَعْرَىٰ118
ここでは,あなたがたのために(十分の御恵みがあって)飢えもなく,裸になることもない。
وَأَنَّكَ لَا تَظْمَأُ فِيهَا وَلَا تَضْحَىٰ119
また渇きを覚えることもなく,太陽の暑さにも晒されない。」
فَوَسْوَسَ إِلَيْهِ الشَّيْطَانُ قَالَ يَا آدَمُ هَلْ أَدُلُّكَ عَلَىٰ شَجَرَةِ الْخُلْدِ وَمُلْكٍ لَا يَبْلَىٰ120
しかし悪魔はかれに囁いて言った。「アーダムよ。わたしはあなたに永生の木と,衰えることのない王権を教えてあげましょう。」
فَأَكَلَا مِنْهَا فَبَدَتْ لَهُمَا سَوْآتُهُمَا وَطَفِقَا يَخْصِفَانِ عَلَيْهِمَا مِنْ وَرَقِ الْجَنَّةِ ۚ وَعَصَىٰ آدَمُ رَبَّهُ فَغَوَىٰ121
両人がそれを食べると,恥かしいところがあらわになった。それでかれらはその園の木の葉でそこを覆い始めた。こうしてアーダムは主に背き,誤ちを犯した。
ثُمَّ اجْتَبَاهُ رَبُّهُ فَتَابَ عَلَيْهِ وَهَدَىٰ122
その後,主はかれを選び,悔悟を赦され御導きになられた。
قَالَ اهْبِطَا مِنْهَا جَمِيعًا ۖ بَعْضُكُمْ لِبَعْضٍ عَدُوٌّ ۖ فَإِمَّا يَأْتِيَنَّكُمْ مِنِّي هُدًى فَمَنِ اتَّبَعَ هُدَايَ فَلَا يَضِلُّ وَلَا يَشْقَىٰ123
かれは仰せられた。「あなたがた両人は一緒にここから下がれ。あなたたちは互いに敵である。もしあなたがたにわれから導きが下れば,誰でもわが導きに従う者は迷うことなく,また不幸に陥らないであろう。
وَمَنْ أَعْرَضَ عَنْ ذِكْرِي فَإِنَّ لَهُ مَعِيشَةً ضَنْكًا وَنَحْشُرُهُ يَوْمَ الْقِيَامَةِ أَعْمَىٰ124
だが誰でも,わが訓戒に背を向ける者は,生活が窮屈になり,また審判の日には盲目で甦らされるであろう。」
قَالَ رَبِّ لِمَ حَشَرْتَنِي أَعْمَىٰ وَقَدْ كُنْتُ بَصِيرًا125
かれは言う。「主よ,わたしは(以前)聴限者であったのに,何故わたしを盲目として甦らせたのですか。」
قَالَ كَذَٰلِكَ أَتَتْكَ آيَاتُنَا فَنَسِيتَهَا ۖ وَكَذَٰلِكَ الْيَوْمَ تُنْسَىٰ126
かれは仰せられる。「われの印があなたに下った時,あなたはそれを無視したではないか。今日あなたはそれと同様無視されるのである。」
وَكَذَٰلِكَ نَجْزِي مَنْ أَسْرَفَ وَلَمْ يُؤْمِنْ بِآيَاتِ رَبِّهِ ۚ وَلَعَذَابُ الْآخِرَةِ أَشَدُّ وَأَبْقَىٰ127
われはこのようにして,背いた者と主の印を信じなかった者に報いる。だが来世における懲罰は,更に厳しくまた永続する。
أَفَلَمْ يَهْدِ لَهُمْ كَمْ أَهْلَكْنَا قَبْلَهُمْ مِنَ الْقُرُونِ يَمْشُونَ فِي مَسَاكِنِهِمْ ۗ إِنَّ فِي ذَٰلِكَ لَآيَاتٍ لِأُولِي النُّهَىٰ128
かれらには御導きはなかったのか。かれらより以前にもわれはどんなに多くの世代を滅ぼしたことか。かれら(古人)の住んでいた所を(今)かれらは歩いている。本当にこの中には理知に富む者への印がある。
وَلَوْلَا كَلِمَةٌ سَبَقَتْ مِنْ رَبِّكَ لَكَانَ لِزَامًا وَأَجَلٌ مُسَمًّى129
もし,主から御言葉が下されていなかったならば,(懲罰は)避けられないのである。だが,定められた(猶予の)期限がある。
فَاصْبِرْ عَلَىٰ مَا يَقُولُونَ وَسَبِّحْ بِحَمْدِ رَبِّكَ قَبْلَ طُلُوعِ الشَّمْسِ وَقَبْلَ غُرُوبِهَا ۖ وَمِنْ آنَاءِ اللَّيْلِ فَسَبِّحْ وَأَطْرَافَ النَّهَارِ لَعَلَّكَ تَرْضَىٰ130
だからかれらの言うことを忍び,太陽が上がる前,またそれが沈む前に,あなたの主の栄光を讃えなさい。なお夜の一時も,また昼の両端にも讃えなさい。必ずあなたがたは満たされるであろう。
وَلَا تَمُدَّنَّ عَيْنَيْكَ إِلَىٰ مَا مَتَّعْنَا بِهِ أَزْوَاجًا مِنْهُمْ زَهْرَةَ الْحَيَاةِ الدُّنْيَا لِنَفْتِنَهُمْ فِيهِ ۚ وَرِزْقُ رَبِّكَ خَيْرٌ وَأَبْقَىٰ131
またわれが,かれらのある部類の者に与えたこの世の生活の栄華に,あなたの目を見張ってはならない。われは,それによってかれらを試みた。あなたの主の賜物こそ至上でまた永続する。
وَأْمُرْ أَهْلَكَ بِالصَّلَاةِ وَاصْطَبِرْ عَلَيْهَا ۖ لَا نَسْأَلُكَ رِزْقًا ۖ نَحْنُ نَرْزُقُكَ ۗ وَالْعَاقِبَةُ لِلتَّقْوَىٰ132
またあなたの家族に礼拝を命じ,そして(あなたも),それを耐えなさい。われはあなたに御恵みを求めない。あなたがたに恵みを与えるのはわれである。善果は主を畏れる者の上にある。
وَقَالُوا لَوْلَا يَأْتِينَا بِآيَةٍ مِنْ رَبِّهِ ۚ أَوَلَمْ تَأْتِهِمْ بَيِّنَةُ مَا فِي الصُّحُفِ الْأُولَىٰ133
またかれらは,「何故かれは,わたしたちに主から一つの印をも(湾?)さないのですか。」と言う。以前の諸啓典にある明証が,かれらに下っているではないか。
وَلَوْ أَنَّا أَهْلَكْنَاهُمْ بِعَذَابٍ مِنْ قَبْلِهِ لَقَالُوا رَبَّنَا لَوْلَا أَرْسَلْتَ إِلَيْنَا رَسُولًا فَنَتَّبِعَ آيَاتِكَ مِنْ قَبْلِ أَنْ نَذِلَّ وَنَخْزَىٰ134
われがもしこれ以前にかれらを処罰して,滅ぼしていたならば,かれらは必ず,「主よ,何故あなたは,わたしたちに使徒を遣わされなかったのですか。そうすればわたしたちは,卑しまれ屈辱を被る前に,あなたの印に従ったでしょうに。」と言ったであろう。
قُلْ كُلٌّ مُتَرَبِّصٌ فَتَرَبَّصُوا ۖ فَسَتَعْلَمُونَ مَنْ أَصْحَابُ الصِّرَاطِ السَّوِيِّ وَمَنِ اهْتَدَىٰ135
言ってやるがいい。「各人は待っている。だからあなたがたも待て。あなたがたはやがて,平坦な道を歩む者は誰か,また導かれた者は誰かを知るであろう。」